地元でがんばる会社たち──きらやか産業賞の受賞企業・2024年度版をご紹介!
1 「きらやか産業賞・ベンチャービジネス奨励賞」2024年度の受賞企業が決定しました!
地域の未来を支える中小企業や団体を応援する「きらやか産業賞」と「ベンチャービジネス奨励賞」。今年も、山形県内で意欲的な取り組みを行う企業さまが表彰されました。
授賞式は2025年3月17日、山形グランドホテルで行われ、受賞企業さまのこれまでの努力と功績がたたえられました。
「きらやか産業賞」は今回で36回目、「ベンチャービジネス奨励賞」は29回目となり、長年にわたって地域の挑戦を後押ししてきた表彰制度です。今回(2024年度)の受賞者は以下の通りです。誠におめでとうございます!
【第36回きらやか産業賞】
- 公益社団法人山形交響楽協会(前理事長 園部 稔 氏。2025年6月3日より理事長 板垣 正義 氏)
- 株式会社後藤組(代表取締役 後藤 茂之 氏)
- 沼田建設株式会社(代表取締役社長 笹 健一 氏)
【第29回ベンチャービジネス奨励賞】
- 株式会社山から(代表取締役 髙橋 寛光 氏)
次章からは、両賞を受賞した企業について、事業の内容や選考理由を交えてご紹介します。
2 2024年度 受賞企業のご紹介(敬称略)
1)【きらやか産業賞】音楽で地域と子どもたちを育む─山形交響楽協会
(出所:山形交響楽団ホームページ)
「子どもたちに音楽のミルクを!」という想いのもと、教育・文化・地域をつなぐ活動を長年続けてきた山形交響楽協会。その継続力と地域全体への広がりが評価され、今回のきらやか産業賞受賞となりました。
山形市に本拠を置く山形交響楽協会は、1972年に設立された東北初のプロ・オーケストラ「山形交響楽団」を運営する団体です。以来50年以上にわたり、地域に根ざした音楽活動を続けてきました。
楽団は、年間16回の定期演奏会のほか、庄内での公演や県内各地での「ユアタウンコンサート」などを展開。さらに、東北6県と新潟県を中心に年間100回以上のスクールコンサートを実施し、これまでに延べ5200回以上、約299万人の子どもたちに生の音楽を届けています。創立指揮者・村川千秋氏の「子どもたちに音楽のミルクを!」という理念のもと、情操教育や文化の担い手育成にも貢献しています。
楽団は芸術的にも高く評価され、2017年にはモーツァルト交響曲全集で「第55回レコード・アカデミー賞(企画・制作部門)」を受賞。クラシック音楽専門誌「音楽の友」では、世界オーケストラランキング国内6位、世界45位に選ばれるなど、国際的な存在感も増しています。
音楽を通じて地域文化の活性化と子どもたちの教育に取り組み続けるその姿勢は、文化産業が地域社会にもたらすインパクトの大きさを実証しており、他の地域でも参考となるモデルケースといえるでしょう。
2)【きらやか産業賞】全員でDXに取り組む老舗の建設会社─後藤組
(出所:後藤組ご提供資料)
後藤組は長い歴史を持つ建設業(2026年には100周年)でありながら、デジタル化への挑戦を恐れず、DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて業界の常識を塗り替えてきたことが評価され、今回のきらやか産業賞受賞となりました。
1926年創業、米沢市に本社を構える株式会社後藤組は、社員150人、完成工事高で米沢市内トップを誇る総合建設業です。地域に根ざした工事実績を積み重ねつつ、東京支社を通じて都市部でも実績を拡大しています。
2019年からは本格的にDXに着手しています。特徴的なのは「全員DX」をモットーに、「全社員に何でもまず一つアプリを制作して発表する」などユニークな取り組みを実践している点です。建設業界における生産性向上の先進事例となりました。
こうした取り組みにより、2022年には「kintone AWARDグランプリ」や全国中小企業クラウド実践大賞 「東北総合通信局長賞」、2023年には「TOHOKU DX大賞 業務プロセス部門 最優秀賞」、さらに2024年には「日本DX大賞(マネジメントトランスフォーメーション部門 大賞)」など、全国レベルでの受賞が続いています。
伝統的な業界でありながらも変革を恐れず、将来を見据えて自らの仕組みを変える力。そして「書類は60%減少。残業時間20%減少。営業利益44%増加」という目覚ましい実績を挙げている後藤組。地域企業にとってDXは難しそうに見えがちですが、後藤組の事例は「やればできる」ことを具体的に示しています。
3)【きらやか産業賞】独自の「技術」と「人材育成」─沼田建設
(出所:沼田建設ホームページ)
沼田建設は、革新的な建設技術の開発と、地域に根ざした人材育成の両立を図っている点が高く評価され、今回、きらやか産業賞受賞となりました。
1930年創業、新庄市に本社を置く沼田建設は、最上地域を代表する総合建設業者として、2024年3月期には売上高61億円、社員128名の老舗企業です。長年の歴史の中で、地域インフラを支えるとともに、新しい技術への挑戦も続けています。
特に注目されているのが、同社が保有する2つの特許技術です。「パルフォースモルタル工法」は、廃止する管やトンネルなどを破壊せずに埋め立てすることが可能となる、循環型社会の構築を目的とした全く新しい工法です。もう一つの「推進工法」は、道路を掘り返さずに地下に管を通すことができ、住民への影響を最小限に抑えながら工期を短縮できる工法として注目されています。
また、同社は建設業界では珍しい独自の奨学金制度も実施しています。最大月額6万円、4年間で最大288万円を貸与し、10年以上勤務すれば返済が全額免除される仕組みです。この制度により、最上地域の若者の雇用促進と人材定着に大きく貢献しています。
技術力と人の両方を大切にし、地元に根差しながらも未来を見据えた経営を実践する沼田建設。その取り組みは、これからの地方建設業が目指すべき方向の一つを示しているように思います。
4)【ベンチャービジネス奨励賞】「和」を活かしつつ、「洋」を取り入れた新しいお菓子─山から
(出所:山からご提供資料)
山からは、地域資源を活かしながらも、革新的な商品開発とグローバルな視点を融合させた経営戦略が評価され、今回、ベンチャービジネス奨励賞受賞となりました。
1918年創業の「高橋商店」を起源とし、時代に合わせて事業の形を変えながら、2019年に「株式会社山から」として再スタート。和と洋を融合させた新しい菓子作りを軸に、上山市から山形、そして全国、世界へと独自のおいしさを届けています。
看板商品「かみのやまシュー(上山秀)」は、地元のブランド米「つや姫」を使い、ふるさと納税の返礼品として3年連続1位を獲得する人気商品です。また、商品開発にも積極的で、「ガブリヤヤマガタシューラスク」や「かみのやまぷるーる」など、やまがた土産菓子コンテストで多数の受賞を誇っています。
M&Aにより山形市の老舗茶舗と連携し「お茶と菓で岩淵」を出店するなど、地域内での新市場開拓にも注力。さらに、ベトナム産チョコレートを使った商品や、カンボジアへの寄付・海外実習生の受け入れなど、SDGsにも通じるグローバルな視野を持って事業を展開しています。
「第三の創業期」と位置づける現在、明確なブランド戦略と柔軟な発想で、新しい価値を次々と生み出している山から。伝統を守りながら、変化を恐れずグローバルにもチャレンジするその姿勢が、多くの地域企業に刺激を与えています。
3 まとめ──地域を思う気持ちが、強さにつながる
4つの受賞企業・団体に共通しているのは、「地域を良くしたい」「一緒に働く人を大切にしたい」「人の暮らしを支えたい」といったまっすぐな想いです。そして、その想いを形にするための工夫と努力を、地道に積み重ねてきた点です。
中小企業が生き残っていくためには、時代の変化に柔軟に対応しながら、自分たちの強みを活かす必要があります。今回紹介した受賞先は、参考の一例になるかもしれません。
お読みいただいた皆さまの会社でも「うちの地域では何ができるか」「どうしたらもっと地域や社員の役に立てるか」を考えるきっかけにしていただけたら幸いです。
以上(2025年6月作成)
